来月から3年間の予定で海外転勤ですが、何か注意することありますか
2015年7月1日以後から日本の居住者が出国する際に、1億円以上の有価証券などを所有している場合、その含み益に課税される制度があります。これを国外転出時課税制度といいます
えっ 売却もしていないのに税金を支払わないといけないのですか
そうなんですよ。でも納税するお金がない場合は納税猶予という制度があって一定期間は支払わなくても済むんだ
でも大変そう
そうだね、通常の確定申告に比べると少し面倒かな
なんでこんな制度があるんですか
シンガポールや香港など株式の売却益に課税しない国があって、これらの国に出国して株式を売却して、その売却益に対する課税を逃れることができてしまいます。このような租税回避行為を防ぐために導入されました
国外転出時課税の概要
2015年7月1日以後に出国する居住者が1億円以上の有価証券等を所有している場合には、出国時にその有価証券等について譲渡等があったものとみなして、その資産の含み益に所得税が課税されます。
対象資産
- 有価証券・・・株式、投資信託(NISAも含む)
- 匿名組合契約の出資持分
- 未決済の信用取引やデリバティブ取引
対象者
次のいずれにも該当する者
- 上記(2)の対象資産の合計額が1億円以上(含み益にかかわらず)
- 出国日前10年以内において、国内に5年超住所があること
手続き
- 翌年3月15日までに確定申告
- 含み益は出国時の時価で算定
- 出国時までに確定申告
- 含み益は出国予定日の3カ月前の時価で算定
納税猶予を受ける場合
概要
出国時までに「納税管理人の届出書」を提出し、一定の要件の下、国外転出時課税の適用により納付することとなった所得税について、出国日から5年を経過する日まで納税が猶予されます。
手続き
- 確定申告期限までに
- 一定の書類を添付した確定申告書を提出し、
- かつ納税猶予分の所得税及び利子税相当分の担保を提供
担保
- 不動産
- 国債、地方債
- 税務署長が確実と認める有価証券
- 税務署長が確実と認める保証人の保証
- 非上場株式
- 持分会社の社員持分 など
非上場株式を担保にする場合の注意点
非上場株式の要件
- 金融商品取引所に類するものであって外国に所在するものに上場されていないこと
- 店頭売買有価証券登録原簿に登録されていないこと
- 店頭売買有価証券登録原簿に類するものであって外国に備えられるものに登録がされていないこと
- 質権の設定、差し押さえ、担保の設定又は民事執行法その他の法令の規定による処分の制限がされていないこと
- 譲渡について譲渡制限が付されている場合には、譲渡について株主総会の決議又は取締役会の承認を受けるなど譲渡可能とされていること
必要書類
- 株式に質権を設定することについての承諾書とその押印に係る印鑑証明
- 株主名簿記載事項証明書とその押印に係る印鑑証明
- 株式会社の定款の写し など
相続や贈与も国外転出時課税制度の対象
国外転出時課税制度は、対象資産を持った人が出国するときだけでなく、相続や遺贈で国外に住む人に対象資産が渡った場合も所得税の課税対象になります。
対象者と対象資産は出国時の場合と同じです。
また、出国時の場合と同様に、納税猶予制度や減額措置が受けられます。
贈与の場合は、贈与したときの価額で売却したものとして含み益を計算し、贈与した人の所得として確定申告を行います。
相続の場合は相続時の価額で売却したものとして含み益を計算します。
相続人が亡くなった人の準確定申告を行います。
まとめ
国外転出時課税は比較的新しい税制で、知らない人も多いかもしれませんが富裕層の方は早めに税理士などの専門家に相談されることをお勧めします。
国税庁ホームページより