6次産業化はどんな業種でも可能(3) 時代に必要以上に翻弄されていた

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<>かすかに見えた光

たまたま訪れた焼肉屋の過去に触れて、A社長が目指したのは、「自分たち独自の製品を作る」ということでした。

これまでA社は、アパレルメーカーから、「こういう製品を作ってほしい」との依頼を受けて、その注文に忠実に応えるのが仕事のすべてでした。

サシが入った牛肉が望まれればそのように牛を育て、今度は赤身をと言われれば新たな苦労を引き受けてきたのが肥育農家でした。

それは時代に「必要以上に」翻弄されてきたA社の姿に重なります。

外部要因に影響される幅をできるだけ少なくする経営をA社長は志向し始めたのです。

 

<>注文する側に回る

具体的に何をしたかというと、自分たち発信の製品を作ることにしたのです。

絹でも綿でもいけるシャツをアイテムに選びました。

といって、これまで注文を受けるばかりでしたからデザインのノウハウなどありません。

そこで外部のデザイナーに発注することにしたといいます。

何でもないことのように見えますが、これはA社にとって画期的なことでした。

なぜなら、製品作りに関して、これまで注文を受けるばかりだったのが、創業以降初めて逆に注文する側に回ることになったからです。

 

<>繊維の街のシャツ

ただ、それは思った以上に大変な作業でした。

打ち合わせや試作品づくりを何度も繰り返す必要がありました。

そうしてようやく満足するものができ上がったそうです。

シンプルな作りのシャツでありながらも、それは「繊維の街」の技術が詰まったものでした。

シャツの裏側までも縫い目が目立たない逸品でした。

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